横断幕だらけの冷えきった体育館。
パイプ椅子は辛えなぁ。
そろそろ俺の名前が呼ばれるぜ。思いきりウケ狙ってやんべ。
それぞれの想いを背負って僕らはこの日を迎えた。
2000年3月 卒業式。
入場曲にのって僕らは「3年間、くそつまんなかったな」なんて歩幅を合わせた。
外を見ると桜が準備万端だった。
朝のホームルームで担任から何人か呼び出され
「頼むから卒業式くらいはおとなしくしてくれよ」
となぜだか懇願された。
最初からぶち壊す気なんてなかったさ。俺はこの日を待ってたんだから。
式が終わり、教室へ帰ってくると何人かの女子が泣いていた。
担任は目に涙を溜めながら
「ここまで手のかかるクラスは初めてだった」と言った。
僕らは事前に用意したビールとタバコをポケットから取り出し、担任と乾杯した。教室で吸うタバコは最高にうまかったし、担任と制服姿で飲むビールは格別にうまかった。
がっちり握手をして、初めて担任に「ありがとう」と言った。
少しだけ涙がこぼれた。
それからいつも一緒にいた仲間たちと校門前で写真を撮った。
シャッターが切られた瞬間、3年間はそっと終わっていった。
写真の僕は満面の笑みで仲間に囲まれてら。
3年間は今日の為にあったんだ。僕らはこの瞬間を迎えるために入学してきたんだ。
いつか桜が咲いて、「高校生」じゃなくなって、
グラウンドでボールを蹴った日々や
授業をさぼって怒られた日々や
教科書に恋を記した日々なんてのが過去になって
未来や夢や人生なんて考えるようになって
自分が魂をかけられるものが見つかって
今僕は生きています。
だから
いつか桜が咲いて、「高校生」じゃなくなった自分を
少しだけ寂しく想い、少しだけ胸を張ってほしい
汗を流した日々や黒板にぶつけた苛立ちも
いつかは過去になるけれど
その全てが糧になること
その全てをひっくるめて「青春」となること
そこから新しい日々が生まれること
そして駆け抜けた3年間を笑顔と涙で飾ってほしい
「道は別れ、手を振り合ったクラスメイトは
同じ空の下、一緒に生きる一生の仲間となる。」
有坂麻友と近藤視香に捧げます。
卒業おめでとう。