017



先日、勝又組キャストの近藤圭子の結婚式がありました。


彼女と初めて出合った時、
「次の、夏」という作品のオーディション。

制服姿のまま、高校を早退して来たという彼女は
とにかく自由に話し、こちらの質問が霞むくらい多くの事を僕に伝えてくれた。
演技経験はほとんどなく、なぜこんな小さな映画に応募して来たのか、
最初は困惑したのを覚えている。

それでも紡ぐ言葉の端々に、「今」を一生懸命生きようとする姿が感じられて
僕は彼女を推した。


僕が求めるものを全て持っていたように思う。
何をやらせても自分のオリジナルで勝負する彼女の姿は、かっこよかった。
定説もフォーマットもない。導線も、パターンもない。
ただカメラを向ければその瞬間でしか感じれない事を表現する。
僕にとっての模範解答を、ドンピシャで答えてくれる。
お手本のような女優だった。


それから、事あるごとに僕は彼女を頼った。
彼女はいつも即答で快諾してくれた。


桜沢エリカさんの漫画に「掌にダイヤモンド」という作品がある。
僕は、彼女と話す度に「掌にダイヤモンド」を思い出す。

苦しくて、苦くて、どうしようもない毎日なのに
制服という鎧を着て、街へ出れば、自分の存在を必ず誰かが認めてくれる。
苦しくて、苦くて、どうしようもなくても、
ありきたりに恋をして、つま先が痛むくらい背伸びして
何かに触れようとしている。

2010年1月30日 「掌にダイヤモンド」


17歳だった彼女は、21歳になった。
制服を脱ぎ捨て、彼女は旅に出て、長い航海の末、運命を知った。
制服じゃなくて、ウェディングドレスを纏った彼女は
妻として、これから生き続ける。笑い続ける。愛され続ける。




012




「安心してね、大人になんかならないよ、私」

「繋ぐ、四月、」という作品の撮影のときに、彼女がふと放った一言。

僕にはどうして彼女がその言葉を口に出したのかわからない。
脈絡のない会話の、一瞬の隙間に挟んできたこの言葉に
僕は、彼女が、すべてを悟っていた事を知った。


いろんな事を教えてくれたね。ありがとう。




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016





安心していたら、いつの間にか、
大人になっていた彼女。

もう、二度と、つまさきは
痛まないはず。